COLUMN
<第7号>

「厚生年金保険法の改正について」

 去る2月10日、2004年年金制度改革の関連法案が閣議決定し、今国会での成立をめざすこととなりました。現時点では成立前なので、閣議決定されている情報に基づいて、議論されてきた経過を踏まえながら事業主及び従業員の皆さんに影響が大きいと思われる主なポイントについて述べたいと思います。
1、企業負担・本人負担の増加
 現在の厚生年金保険料率は13.58%(労使折半)。改正後は本年10月より+0.354%上げ、2017年度(平成29年度)以降は18.30%を上限として固定することが閣議決定されています。
 これは、たとえば年収650万円(月給41万円、半期の賞与79万円(ともに税引前))の会社員では、現行年間の厚生年金保険料額で44万円余りのところ2017年度では59万円余り、差額として15万円余り(いずれも折半後の金額)となる計算です。
 企業負担はもちろん、従業員本人の負担も徐々に重くなっていくことはまちがいないようです。
2、パートタイマーの適用拡大は見送り

 現行では、パートタイマー自身の年収が130万円未満で、かつ勤務時間や勤務日数が正社員と比べて4分の3未満であれば厚生年金の加入者としなくて良いとされています。これが、「4分の3未満」でなく、「週20時間以上」の勤務者は厚生年金の被保険者としようという案が出され、随分議論されました。とりわけ、パートタイマーを多く雇い入れているサービス業などをはじめ様々な業界からの猛反対がありました。結局今回は見送られることとなりました。とはいえ、廃案になったわけではなく、5年後をメドに検討していくことになっています。
 このパートタイマーの適用拡大については、「人件費の高騰につながり、雇用の調整が避けられない」とする産業界からの反対意見のみならず、さまざまな問題を含んでいます。たとえば、適用した場合の保険料算定方法(新たに今より低い保険料設定を導入するなど)をどうするかといった問題、将来的には給付対象者を増やしてしまうことになる問題など。目先の保険料収入にとどまらない深い課題を抱えています。

3、70歳以降の在職老齢年金制度導入

 原則として25年以上何らかの公的な年金制度に加入していれば、原則として65歳以降は国民年金の制度から老齢基礎年金を受給できます。そして、さらに厚生年金の加入期間がある人は、老齢基礎年金の上乗せとして老齢厚生年金が受け取れるというのが本来の老齢年金の姿です。ただし、昔の厚生年金保険法では、「老齢厚生年金は60歳から受け取れる」と定めてあったので、現在は60歳から特別に厚生年金の制度から老齢厚生年金が支給されています。(生年月日によって段階的に本来の老齢年金の姿に近づく給付パターンになっていきます)
 一方、厚生年金の加入年齢は70歳未満とされています。つまり、70歳までは年金をもらいながら会社に勤める=厚生年金の加入者として保険料負担を負う という人が出てきます。
 けれども、働いて給料を得る=現役の延長であることと、年金を得る=働けないための生活資金を受け取ることは矛盾していると考えられるため、給与の多寡に応じて年金額を調整するしくみである在職老齢年金の制度がすでに導入されています。
 このしくみが、2007年(平成19年)4月より、70歳以降厚生年金の加入者として働く場合にも導入されることが閣議決定されています。年金減額の調整方法は、60〜64歳までと65〜69歳までとでは異なりますが、70歳以降の在職老齢年金は、65〜69歳までのしくみで行われるようです。ただし、70歳以降の保険料徴収は見送られました。


 なお、これら新制度の運用に必要な細かい取り決めについては、国会を経て3月以降に決定されていくものと思われます。確かな情報入手を心がけて頂ければ幸いです。


専門家プロフィール
鈴木久子

【プロフィール】
社会保険労務士/ファイナンシャルプランナー
短大卒業後、保母となるも子どもが好きなだけでは勤まらない現実に挫折。暫く某楽器メーカーの鍵盤奏者のバイトを経験。その後は一般企業の総合事務職を経て社会保険労務士資格を取得。平成10年鈴木久子年金総合オフィス開設。明るい(らしいが実は暗い?!)キャラだけで今日に至る。

【得意分野】
得意分野は屋号参照。年金の講師で呼ばれると「面白かった」と言われることが増え、複雑な心境の今日この頃。

【鈴木久子年金総合オフィス】
〒465-0024 名古屋市名東区本郷1-111 コーポラス元202号
TEL(052)777-2438  FAX(052)777-2453

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