COLUMN
<第61号>

中小建設業における環境ビジネス

 現在の日本経済は、海外からの大きなショックを受けて、2008年の秋より後退局面に突入した。
建設業界の経済環境においても不動産不況、製造業不況のあおりを受けて建設工事・設計計画が大幅に激減している。

 建設業では資本金1億円以上の大企業が占める割合は全体の約1%であり、99%は中小企業となる。(内、21%が個人) 産業別生産額(粗付加価値感)では、建設業生産額は国内総生産の6.0%(約31兆円)、就業者数は国内全体の8.4%にあたる537万人とされている。

 その経営状態は、国や地方自治体の財政難から公共事業の抑制基調は更に進み、過当競争に伴うダンピングが相次ぐため収益が見込めないのが現状である。
全国の企業倒産状況からも建設業の倒産は平成21年6月だけで389件を数え、緊急保証制度効果から倒産件数は減少しつつも今年最多となっている。

 このような経営環境が厳しさを増す中で建設業界も環境問題、環境規制への対応を迫られている。取り分け、建設副産物に対する法制度・規制強化では、 法を遵守する事は勿論の事、ゼロエミッションとして、如何にリサイクル・リユースして行くかが今後の工事受注における選別対象となり得る。
 大企業は、環境問題に対する独自の技術開発により他社との差別化を図っているものの、多くの中小企業においては、 その取り組みが遅れているのが現状である。

 環境省が平成15年7月に発表した「環境にやさしい企業行動調査」によれば、「エコビジネスについての位置づけ」のアンケートの内、 「既に事業展開している。又はサービス・商品等の提供を行っている。」と回答した非上場企業の割合は、平成10年度の13%に対し、平成12年度の回答では倍近くの23.9%であった。

 「環境」と言うキーワードは建設業界においても方向転換を担う一つの道標であり、更に建設に係る環境問題は地域に密接する地元中小企業が有利な展開と成り得るだろう。

 このレポートでは、環境ビジネスに取り組む建設会社2社に注目した。

(1) 潟コタテック


 ・創業:昭和36年  ・資本金:2,500万円
 ・従業員数:50名  ・業種:地質調査業

 潟コタテックは地質調査コンサル業として、創業以来、官公庁発注の公共設計業務を受注してきた地域では相当の技術力を有する老舗企業である。

 「土壌汚染対策法」(環境省・2002年)の施行に伴い、自社の水理地質における知識・実績を活かした環境ビジネスに取り組んだ。

 他企業に先立ち環境ボーリングマシンを導入、土壌汚染調査の年商は2億円を保持し、今後は汚染浄化対策にも参入する。

(2) 潟潟ーケン


 ・創業:平成11年  ・資本金:4,000万円
 ・従業員数:35名  ・業種:一般土木・外構工事・造成工事他

 潟潟ーケンは若き創業者が一代で起業した建設会社であり、主に公共土木工事や民間土地造成工事を受注して来た。 公共工事の相次ぐ低価格入札や不動産不況に伴う土地造成工事の減少に対して、新たな環境ビジネスに取り組む。

 雨水再利用・植栽・建設副産物再利用・自然舗装等、多種多様なエコを外構工事に盛り込み、潟潟ーケンの施工する外構工事が地域の環境に貢献する事をモチベーションとしている。


 2社の新たな環境ビジネスからも考察されるように、建設業においては、土や水等これまでの自社のノウハウが活かされる事により成り立っている。

 但し、この数年に建設業界が官需から民需へ移行したように、地域の中小建設企業が成功するには、事業に対する明確な意識改革とコアな技術を確立する事が望まれる。


専門家プロフィール
森本 光人

【プロフィール】
Forest Japan 代表
日本大学卒業後、森本工産株式会社に入社し、平成14年同社社長に就任。
平成20年環境団体Forest Japan(環境プロフェッショナル集団)代表就任。

【森本工産株式会社】
森本工産株式会社 HP :http://www.geocities.jp/morimoto_kousan
Forest Japan HP :http://www.geocities.jp/forestjapan_eco/index.html


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