COLUMN
<第58号>

保険会社、証券会社、銀行の経営破たんリスク

保険会社・証券会社・銀行が経営破たんしたら、預けた財産はどうなる?


 先月のリーマンブラザーズ証券の経営破たんに続き、その後の保険・金融グループのAIGの経営危機報道(AIGについては米国FRBの金融支援でいったん落ち着いた)、大和生命の経営破たん等、米国のサブプライムに端を発した世界的な金融収縮はまだ底が見えない状況です。
 そのせいか、このところ金融機関が破綻した場合、預けた財産がどうなるかについての相談が増えています。そこで今回、破綻した場合のリスクや、公的な保護制度についてまとめてみました。

1、保険会社の経営破たんリスク


 保険会社が経営破たんした場合、契約者を保護するため、生命保険契約者保護機構(以下、保護機構と記入)があります。この機構には、国内で保険事業を行うすべての生保会社(外資系生保を含む)が加入しており、破綻した場合、下記のような一定の契約者保護が行われます。
(損害保険にも、同様に損害保険契約者保護機構があり)

・保険契約は救済保険会社等に移転
  救済保険会社もしくは保護機構、新会社に保険契約は移転され、破綻後も契約は継続する。

・責任準備金の削減による減額
  破綻すると責任準備金の削減が行われることがあります。 ただし、保護機構により破綻時点の責任準備金* の90%までが補償されます。ここ10数年の国内生保の破綻では、破綻7社中、4社が10%削減、1社が8%削減、2社が0%となっています。

* 責任準備金・・・将来の保険金の支払に備え、保険会社が積み立てている準備金。
            個々の契約についての責任準備金額は、開示されていないが、貯蓄保険での
            責任準備金額はおおよそ、解約返戻金相当額です。

・予定利率の削減による減額
  破綻し契約が移転される際、保険契約の予定利率が引き下げられることがあります。
予定利率とは、保険会社が契約時に約束する運用金利です。 この予定利率は契約期間中も変わらない固定金利で、その金利で運用するという前提で保険料が決められています。通常、破綻すると契約時の予定利率が、破綻時の予定利率に近い率に、引き下げられます。ですので、破綻した場合、養老保険・終身保険・個人年金保険等の貯蓄保険は、責任準備金の1割減では済みません。

 過去実際にわたしが相談を受けた例では、約8割の保険金額を削減された終身保険契約がありました。 契約してからの期間が長く、予定利率の削減幅が大きい契約ほど減額幅は大きくなります。現在の予定利率は、1.5%程度(国内生保)ですが、1990年前後は6%程度もありました。

 つまり、客観的に見て解約しないほうが得な予定利率の高い貯蓄保険ほど、いざつぶれると、減額幅も大きいといえます。逆に定期保険などの掛け捨て保険への影響は少ないといえます。

2、証券会社の経営破たんリスク


 株式、債券、投信信託等の証券商品ですが、証券会社は、商品を作るメーカーではなく販売代理店ですので、証券会社がつぶれたからといって、直接の影響はありません。破綻しても、証券会社の資産とお客さんの資産は、法律で分別管理が義務付けられています。更に、円滑に弁済されない場合でも、投資者保護基金によって保証されることになっているので、破綻した場合の影響は、あまりないといえます。(なお、銀行で販売された投資信託は投資者保護基金の対象ではありません。)もちろん、証券商品については、もともとが元本を保証されていないので、破綻しても同様に元本は保障されません。

3、銀行の経営破たんリスク


 2005年4月以降、銀行が経営破たんした場合、全額保護されるのは当座預金や無利子の決済性預金のみとなりました。定期預金・定期積金・普通預金などは1人(1社)・1金融機関について元本1000万までとその利息が預金保険機構により保護されます。2行が合併した場合、合併後1年間は1000万が、2000万までの保護となります。
 外国銀行の外貨預金は邦銀・外銀問わず、預金保護機構の対象外です。また、外国銀行は日本法人の場合、預金保険機構の対象となりますが、日本支店の場合、預金保険機構の対象外で本国の制度となります。

4、リスクの把握と十分な備えを


 以前、日本の保険会社が破綻したとき、大阪の女性から、ホームページでわたしのレポートを見たとのことで、相談の電話がありました。

(相談内容) 経営破綻した数日前に貯蓄保険の解約手続きをし、ひと安心していたところ、経営破たん後、確認すると、解約手続きは破綻時まで完了していないとの返事。理由は本社での受付処理をもって手続完了とみなすとのことであった。

 いつおきるかわからない地震のために、非常食・避難場所・連絡方法など準備するように、金融機関の破綻も、おきるかもしれないという前提で、よくリスクを把握したうえで、万一のときにあわてず事前にできる対策を講じておきたいものです。


専門家プロフィール
舌古 孝之

【プロフィール】
経営コンサルタント ファイナンシャルプランナー(CFP)
早稲田大学商学部卒業後、銀行勤務を経て、名南経営センター (名古屋)に入社し、中堅中小企業の会計・経営指導業務に関わる。
2003年(株)Jパートナーを設立、それぞれが独立した士業・コンサルタントの専門家を組織し、各専門家の能力を結集した資産管理・事業承継コンサル事業を行っている。現在、名古屋商科大学大学院非常勤講師 パーソナルファイナンス担当

【得意専門分野】
オーナー・事業主・個人の資産管理、資産運用、相続対策、保険相談、事業承継計画策定と推進

【株式会社Jパートナー】
〒461-0001
名古屋市東区泉1−16−7 K21ビル3F
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