COLUMN
<第56号>

介護サービス情報の公表制度について

1.はじめに

 介護保険制度は、「高齢者の尊厳の保持」、「利用者本位」、「高齢者の自立支援」、「利用者による選択(自己決定)」を基本理念とし、これらの理念を現実にサービス利用において保障するための新しい仕組みとして平成12年に導入されました。この制度により、従来、利用者が事業所を選択できなかったことが、利用者が自らより良い介護サービス(事業者)を選択し、直接契約できるようになりました。
 ただ、介護保険制度では利用者が選ぶということで、事業所の競争の阻害にならないような配慮から、情報発信は事業者が中心になり行い、行政からの情報提供は、サービス業者名、住所、連絡先レベルとなり、情報が不足することとなりました。

2.「介護サービス情報の公表制度」とは・・・

 こうした中、平成17年の介護保険法の改正に伴い、利用者の選択を支援する方策として、「介護サービス情報の公表制度」が位置づけられました。この制度は、原則、全ての介護サービス事業所に対して、一定の「介護サービス情報」の公表が義務化され、公表された情報は、利用者をはじめ誰もがいつでも自由に閲覧でき、各事業所間の比較検討を可能とし、事業者の情報提供のもと、利用者の、より適切なサービス選択を支援するための制度です。
 ただ、この制度は、最低基準が守られているかどうかの指導監査でもなく、自助努力の評価をされる第三者評価とも違います。ここでは、客観的かつ定量的なものを確認し公表していくというものです。
 内容は、大きく分類して、基本情報と調査情報の2分類となっています。

 基本情報は、運営法人等の概要、事業所・施設の概要、従業者の状況、介護サービスの内容、利用料、休日の対応や緊急時の対応などや都道府県知事が必要と認める事項などが掲載されています。

 調査情報は、契約内容や計画内容等の説明の有無、サービス提供のマニュアルや実施記録等の有無、サービス提供内容の評価や見直しの有無、地域住民やボランティアの受け入れ等外部との連携の有無、事業計画の策定や財務内容の開示の有無などが掲載されています。

 事業者が利用者の選択に資する情報を自ら積極的に公表するという点に特色があります。公表は義務となっており、書くのは事業者自身です。その記載された項目のうち、事実関係の確認を県から認定された調査機関が行い公表されます。ただ、調査機関では内容の良し悪しのところまで立ち入らない(評価できない)制度です。そういう意味では、あくまで参考の情報と言えます。

3.すべて「有」がいい事業所とは限らない!?

 この調査では、内容の良し悪しは評価できません。報告された事項について、基本的に評価項目の資料や記録の原本を一件確認すれば「有」となります。よって、マニュアルでも、現場職員が何十時間も議論して1枚の使える手順書として作られ、それが現場で使いこなされている“本当の”マニュアルもあれば、この調査の為に購入した立派な、付箋一枚も手垢ひとつもついてない冊子もあり、どちらも事実関係の確認の結果、公表は同じ「有」となります。
 定年年齢を上限として、当該上限年齢未満の労働者を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
 この情報をどう判断するかも、利用者側の責任というのがこの制度です。この公表結果を、通信簿やランク付けのような活用だけはしない方が良いのではと思います。

4.介護サービス情報の公表制度の有効な使い方

 この介護サービス情報公表制度の有効な活用法
 (利用者)
   @サービス業者選びの視点が提供される
   Aサービス業者の比較検討材料となる
 (事業者)
   @自らの取組の努力の広報
   A他の事業者の取組を参考資料として資質の向上につなげる

 例えば利用者側の有効な使い方としては、事業所側が、「有」とされている項目について、その内容を見せてもらうというのはいかがでしょうか?
 これから、契約しようとする際に、長期的になると予想されるため、経営的に安定しているところに介護をお願いしたいと思う場合は、「事業計画及び財務内容を閲覧に供することを明記した文書」を見せていただく。認知症の方の介護をお願いしようとする場合は、「認知症の利用者への対応及び認知症ケア」に関するマニュアルや研修記録を見せていただく。そこで、公表では「有」となっていても、見せられないという事業所では、今後の介護の内容のレベルも見えてくると思われます。
 特に、家族の希望だけでなく、「利用者の希望が記入された…計画又は…検討会議の記録」が「有」となっている事業所について、認知症の方の希望をどのように聞きだし、それを的確に記入し、その上で介護方針や介護計画がしっかりと記入されている事業所かどうかが、今後多数の介護職員がかかわる現場でケア内容が一貫して行われるか、行き当たりばったりの介護になるのかが明確に分かれてくると思われます。

5.まとめ

 事業所の選択によって、ご本人の幸せ感が大きく異なってくるのが現実です。ぜひ、この制度をご活用いただき、公表された情報をもとに、事業所側に見せてもらう、そんな中で判断していくことが、一生懸命、あたたかい心で介護している良質な事業所に巡り合える近道であると思われます。

 ■ 介護サービス情報は、次のアドレスから調べられます
 http://www.kaigo-kouhyou-aichi.jp/kaigosip/Top.do (愛知県内のサービス事業者の情報)


専門家プロフィール
中野 栄治
【プロフィール】
福祉サービス機構株式会社 代表取締役/社会福祉士・精神保健福祉士
大学卒業後、メーカーに20年間勤務。学生時代から身体障害者福祉、知的障害者福祉に携わりながら、退社後、高齢者認知症高齢者介護研究評価調査員活動。その後、精神障害者福祉、児童福祉にも携わるとともに、大学、専門校、各種セミナーの講師を行う。福祉サービス機構株式会社を設立し代表取締役に就任。愛知県より介護サービス情報の公表制度及び福祉サービス第三者評価機関として認証。他、任意団体である堀田わくわくクラブ代表。

<加盟団体>
日本社会福祉士協会会員、日本精神保健福祉士協会会員、あいち福祉オンブズマン、商経会理事、障害とともに生きる会、スペシャルオリンピックス日本など

◆得意・専門分野
福祉サービスを必要とする方のサービスコーディネート。福祉人材育成。

【福祉サービス機構株式会社】
〒461-0001 名古屋市東区泉一丁目16-7 K21ビル3F
     TEL:052-908-2948 FAX:052-908-2946
     e-mail: eiji-nakano@fukushi-service-o.co.jp
【堀田わくわくクラブ】
〒467-0862 名古屋市瑞穂区堀田通八丁目7番


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