COLUMN
<第53号>

「事業承継税制〜自社株の相続納税猶予〜」

 自社株に対する相続税額のうち8割の納税が猶予される制度が創設されます。

 本制度は平成21年度税制改正ですが、「中小企業の事業の円滑化に関する法律(仮称)」
(平成20年10月1日施行予定)施行日から遡及適用される予定です。

 T 自社株に関する現行制度の概要


 現行制度は自社株について評価額を10%減額できる制度です。

◆評価減の概要
 @未上場で評価総額が20億円未満である会社の株式
 A発行済株式総数の2/3相当額または評価額のうち10億円までのいずれか低い金額

 評価を減額されるこの10%部分は納税を免除されることになります。
 なお、本制度を適用した場合、小規模宅地の評価減(所定の宅地評価を80%または50%減額)の適用に制限が加えられます。
 本制度は、新制度の適用開始後、経過措置をもって廃止されます。


 U 新制度


<概要>
 新制度は、自社株に対応する相続税額のうち、8割の納税を猶予できます。

<要件>
 ・ 対象会社 中小企業基本法における中小企業
 ・ 被相続人
  @ 会社の代表者であったこと
  A 被相続人と同族関係者で発行済株式総数の50%超保有
  B 同族関係者で筆頭株主であった
 ・ 相続人
  @ 会社の代表者であること
  A 被相続人と同族関係者で発行済株式総数の50%超保有
  B 同族関係者で筆頭株主となる
  ※被相続人の筆頭株主要件には、後継者を除いたところで判断の予定

<税負担軽減措置>
発行済株式総数の2/3以下の部分に対応する相続税額の8割を納税猶予

<納税猶予条件 1>
相続税の申告期限から5年間、事業を継続する。
 @ 猶予を受ける相続人が代表者であり続ける。
 A 雇用の8割以上を継続
 B 対象株式を継続保有
(これらの要件については経済産業大臣のチェックが入ります。)

<納税猶予条件 2>
要件1の期間後も株式を継続保有する。


 V 猶予の取消・免除


 納税猶予条件を満たさなくなった場合、納税猶予が取り消され、猶予された相続税に利子税を加算して納付しなければなりません。

なお、相続人が死亡した場合、納税猶予は納税免除となります。


 W 新制度利用上の注意


 新制度は納税猶予であり、相続人が死亡しない限り納税は免除されません。従って生前に次の世代への株式移転等を行いづらい状況となります。

何らかの事情により株式を売却した場合なども納税猶予が取り消されます。

 また、本制度の適用には被相続人が同族関係者の中での筆頭株主であることを条件にしていますが、相続税対策による生前贈与の実施により、被相続人となる人が筆頭株主でなくなった場合には適用されません(但し、後継者を除いて筆頭株主要件を判断する予定です)ので、相続税対策の生前贈与には注意が必要です。

※本記事は平成20年度税制改正大綱及び中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(案)を基にしています。


専門家プロフィール
谷澤 佳彦

【プロフィール】

1987年和歌山大学経済学部経営学科を卒業し、イトーヨーカ堂(財務室証券部)、
三田会計事務所勤務を経て、1993年税理士登録および開業し現在に至る。

◆得意・専門分野
1994年、95年と連続で実家の相続が発生し多額の相続税を納付することに。相続税で苦しむ人の立場を痛感。これを機に相続税対策に注力。現在、相続税専門税理士の下で知識・実務対策の研鑽を積んでいる。


【谷澤佳彦税理士事務所】
〒113-0033 東京都文京区本郷3-32-6 永功ハイヴ801号室
     TEL 03-5805-3875 FAX 03-5805-3893
     E-mail tanizawa@tkcnf.or.jp


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