COLUMN
<第51号>

事業承継問題の解決を目的としたMBOの有効性

「そろそろ引退して、第二の人生を考えたい。経営の第一線からは退き、会社の株も手放してもいい。ただ100%安心して任せられる後継者がいない。自分が引退しても、現役員・従業員には引き続き安心して働ける環境を維持したい。どうしたらいいだろうか。」

 MBO は、社長のこうした事業継承の悩みを解決するための有効な手段です。
 MBO は、「経営陣による企業買収」のことをいい、M&A の手法のひとつです。
 (M&A は企業同士の資本提携全般を意味しますが、なかでもMBO は「売り手に属する経営陣が買い手となって、ファンドと共同で自らが属する企業の株式を買収する」というものです)
 例えば、2005 年にポッカコーポレションが、MBO によって株式上場を取りやめた例があります。このMBOは、上場企業の経営の立て直しを目的としたもので、「一般投資家の株」を「経営陣とファンドが買取る」ものでした。。一方、本稿でご紹介するMBO は、事業継承問題の解決を目的としたもので、「社長の株」を「社長以外の経営陣とファンドが買取る」ものです。本来ならば、経営陣が自己資金でオーナーの株を買取りたいところですが、一般的にサラリーマンである経営陣には買取るための資金がありません。ですから、ファンドがオーナーの株式を買取り、経営陣はファンドと共同で会社の経営にあたります。

 ここで、MBOを実施するメリットの中で、代表的なものを4つほど列挙したいと思います。

@ 創業者利潤実現
 ファンドがオーナー経営者の株を引受けることで、経営者はある程度の資金を手にして、創業者利潤を実現できます。創業者利潤を実現するもう一つの方法に株式上場がありますが、株式上場をする時間とコストを考慮すると容易ではないことは明らかです。しかし、必ずしも毎期高い成長性を維持しながら成長している企業でなくても、安定的な収益基盤を有する企業であれば、MBO を実行することで創業者利潤を実現できる可能性が高いのです。

A 雇用維持
 MBO は、現役員・従業員の人的資産に加えて、取引先等の営業資産も全て引き継ぐことが前提です。従って、MBO を実行した後も、人員削減や資産売却等が強行されることはなく、その後の企業運営についても、(旧)オーナー経営者が顧問として残る等、柔軟な対応が可能であることも特徴です。

B 人材補強
 オーナー経営者の経営手腕が高ければ高いほど、経営者がリタイアしたあとの役員・幹部社員だけでは経営が安定しないことがあります。その際には、ファンドの有する人材ネットワークなどから、必要とされる人材を招聘することで、経営陣を補強することができます。

C 企業価値向上
 MBO によって、経営陣とファンドが協力し合いながら経営を進めていくことになりますが、ファンドは、それまでのオーナー経営者や役員陣、従業員と同様に、企業価値を如何にして高めていくかという視点で将来を考えており、役員陣・従業員と“同じ船に乗っている”といえます。従って、経営課題に対しては、ファンドは経営陣と協力して問題解決へ向けて知恵を絞りますし、営業活動にも協力を惜しみません。

 このようにMBO を用いると、
     @ 第二の人生を不自由なく生活していくだけの創業者利潤を実現し、
     A 社員の雇用を維持したまま、事業を継続していくことができる上、
     B 必要に応じて、後継者や幹部社員を招聘することが可能です。
     C さらに、ファンドの支援を得て、企業成長を加速することができます。

 MBO は、創業以来育んできた事業を手放す一抹の寂しさがありますが、しかし、安心して次の意欲的な人材に会社を託し、第二の人生を有意義に楽しむための資金と時間を得るためには、有効な手段だといえます。


専門家プロフィール
佐藤 文則

【プロフィール】
日本アジア投資株式会社にて東海地区のベンチャー企業への投資・育成・EXIT業務に携わった後、現在、JPE中部オフィス(名古屋)に常駐。東海・北陸地区でのMBO支援、ネットワーク構築に従事。

【会社案内】
独立系ベンチャーキャピタルの日本アジア投資株式会社と株式会社 日本M&Aセンターを株主として2000年10月に設立。 "志を継いで 夢をカタチに"を投資理念として、事業承継問題を抱える 中小企業に資金面・人材面からトータルなソリューションを提供。

【日本プライベートエクイティ株式会社(JPE)】(中部オフィス)
   愛知県名古屋市中区錦2−12−14MANHYO第一ビル10F
     TEL:052-211-2913 FAX:052-211-2920
     URL http://www.private-equity.co.jp/


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