COLUMN
<第22号>

自律的キャリア形成〜企業としてどう支援すべきか〜

 最近、日本において社会の変化と個人の覚醒作用を背景に、キャリア問題がクローズアップされてきました。社会の変化とは、グローバリーゼーションの浸透やIT革命の進行につれて、社会が変動し、人生行路が不確かになり、将来が展望しにくくなったということです。個人の覚醒とは、国や企業をはじめとする社会の諸制度が変わったことで、人生は他人任せには出来ず、自分の力で切り拓いていかざるを得なくなってきたことへの人々の自覚です。
 社会情勢や労働市場の変化は急激であり、個人の労働者からすると自らのキャリア形成に一人で立ち向かうのは容易ではありません。その意味では、企業内外に「社員のキャリア形成を支援する仕組み」が整備されていることは、必要不可欠といえます。

1.キャリアをめぐる環境

 日本の場合、これまで、いわゆる日本的雇用慣行(終身雇用制、年功序列制等)のもとでキャリア自律とは対極にあるような状態が長く続いてきました。企業は個人のキャリアを会社都合でコントロールする代わりに雇用については終身責任を持ち、社員は雇用の安定を保障してもらう代わりにキャリアについては企業に依存する。ところが、このモデルが今や変化しようとしているのです。

2.自律的キャリア形成を支援する仕組み

 それでは、社員の自律的キャリア形成を企業としてどうやって支援していけばいいのでしょうか。これは、二つに分けて考える必要があります。一つは、社員のキャリア自律に向けた行動や意識をいかに喚起し、強化していくかということで、社員一人一人の仕事の仕方とそのベースになる生き方、考え方に関わる問題です。具体的には、管理的色彩の強いマネジメントスタイルを改革する取り組みが必要であり、同時に本人のワークスタイルやライフスタイルに影響を与える研修や個人支援サービスなども求められます。
 これに対して、すでにキャリア自立度が高まってきた人材が社外流出せず、社内でより充実したキャリアを作っていこうとする働き方を支援するのは、企業全体としての制度や仕組みの改革に関わる問題です。健全な成果プレッシャー、一人一人の仕事の裁量度を高めるマネジメントや個人支援のキャリアサービス、研修などにより本人のキャリア自律行動が喚起されると本人はさらに自己裁量度を上げるような取り組み方をするようになります。それによって、キャリア自律行動をより強化するという良循環が回り始めればプロフェッショナル型人材をどんどんふやしていくことも可能となります。

3.研修とキャリアカウンセリング
 今の時代に求められるのは、過去に積み上げたものや今もっているスキルを活かすことではなく、動機や価値観をしっかりと自己認識させ、それを自分の継続的なアクションへと結び付けていくための研修です。そのアクションも単なるスキル獲得行動だけでなく、主体的ジョブデザイン行動を軸とする行動を重視し、それが継続的にとれるように研修によってフォローしていくことが大切です。そのため、社内でのキャリアカウンセリングは、欧米同様、日本の企業でも今後ますます必要性が増してくるでしょう。
4.ライフデザインを尊重した新しい福利厚生
 少子高齢化社会の進展、女性の社会進出の定着など、新たな社会現象を背景にキャリアデザインとライフデザインの統合の重要性が高まってきています。単に仕事をすればいいのではなく、行き方そのものが問われ、それを家族とともに共有していかなければ、キャリアで成功しても人生が不幸になるといった事態にもなりかねません。その意味でも会社による福利厚生は、キャリア自律の時代には、不必要になるのではなく、むしろ新しいタイプのものを提供していく必要性があります。
5.求められる経営者自身の問題意識
 いまや単に社員の雇用を維持することが、社員の幸せにつながる時代ではありません。 一人一人のキャリア自律こそが、社員の中長期的な幸せと企業の競争力の双方を高めていくための鍵となる概念であり、ピラミッド的な支配型マネジメントスタイルから脱却して、働き方の改革を進めていくことが、環境要因としてキャリア自律の大前提となることを経営者の方々には知っていただきたいのです。
 一方、キャリア自律は、ジョブデザインやライフデザインとも統合された日常的なプロセスとして実現されるものであり、それを推進するのが、キャリア自律能力としてのキャリアコンピタンシーであること、そしてその実行を支援していけば、企業の知的競争力の強化につながるという全体の構図を経営者自身がはっきりと捉えていただきたいと思います。 

専門家プロフィール
菅田芳惠

【プロフィール】
愛知大学経済学部を卒業し、新日本証券(現新光証券)、第一勧業銀行(現みずほ銀行)、日本生命、コンサルタント会社勤務を経て、開業し現在に至る。

【得意・専門分野】
従業員等のキャリア形成のほか、金融関係、個人事業主の税務・保険・年金等のコンサルティング業務。

【グッドライフ設計塾】
〒461-0001 名古屋市東区泉1−16−7 K21ビル3F  鰍iパートナー内
 携帯 090−1569−8595
 E-MAIL goodlife13sugata@yahoo.co.jp


【バックナンバー】

▲PAGE UP

〒450-0002 名古屋市中村区名駅5-16-17 花車ビル南館9F
TEL:(052)485-8271 FAX:(052)485-8272
E-mail:office@j-partner.com
ご注意:このサイトはIE5.5またはNN6.1以降のブラウザでご覧下さい。
     これ以前のバージョンではレイアウト崩れ等の不具合を起こす可能性があります。