COLUMN
<NO2>

「事業用資産を見直すことで事業承継に備える」

1.オーナー名義の不動産を会社が使用する事例
 中小企業の決算報告書からは、会社全体の姿が見えないといわれることがありますが、その理由のひとつとして、オーナー個人の資産が事業用に使用されていることが挙げられます。今までの中小企業では、儲けに応じて役員報酬を支払い、経営者は新たな事業を展開する手段として、その報酬を事業用資産に再投資し、会社へ貸付するという方法が行われてきました。会社の経営が順調なときは、支払う賃借料は経費となりますが、経営状況が悪化してきた場合には、家賃が負担になってきます。また、相続が発生し、事業承継が行われる場合は、会社へ貸付している不動産を相続人の誰が取得するかで問題となるケースも多く見られます。この場合は、できれば相続発生する前に最善の方法を検討することが、会社にとっても後継者にとっても必要です。
2.不動産を会社に売却するときの留意事項

 上記1のような会社の状況変化の影響で、オーナー個人が持っている不動産を売却する
場合、売却前にいくつか留意しておくとよいポイントがあります。まずは、不動産を購入した時期の価格と現在の価格との差額の大きさを調べること。次に、購入した不動産の借入金残高、また、会社借入金の担保に提供されていないかを調べること。そして、その不動産に対する月額賃借料の相場を調査することなど。これらの基本的な項目は、最適な売却方法を選ぶための材料となるため重要です。例えば、工場や店舗など引き続き会社が事業用資産として必要とする場合、この不動産を会社が買い取るにも、このような条件の違いによって、買い取り方が変わってきます。

3.不動産を第三者に売却するときの留意事項

 2と同様、経済事情の変化によって、会社やオーナー一族名義の不動産を売却することになった場合、確認しておくとよい基本的なポイントをいくつか挙げます。

  • 地代家賃は、長年未払いになっていないか
  • 地代は、借地権の設定がされているか
  • 会社と個人の間で多額な貸し借りがないか
  • 会社と個人との不動産の権利が複雑に絡んだ状況になっていないか
  • 会社の金融機関への担保に、資産が提供されていないか、など
4.税制改正を活用する

 事業承継や相続対策として資産の見直しを行う場合、是非検討したいのが今年の税制改正の活用です。今年の改正のポイントの主なものとして、

  1. 相続税・贈与税の税率が引き下げられた
  2. 贈与した財産を相続税に合算して課税する「相続時精算課税制度」が創設され、 2500万円までの非課税枠が設けられた

 1〜3に合わせて、税制改正を活用することで、新しい贈与の活用方法が考えられます。早めの事業承継の実行は、争族を避ける有効な手段となるでしょう。


専門家プロフィール
野尻 名津子
【プロフィール】
日本CFO協会認定 General CFO
【得意分野】
中小企業の事業継承・資産承継・資本対策、会社・個人の財務状態の診断、運用・指導・調査・資産運用及び財産管理に関するコンサルタント業務
【株式会社 名津財務総研】
代表取締役
〒456-0034 名古屋市熱田区伝馬三丁目8番8−1002
TEL 052(683)7778 FAX 052(683)4081 E-mail ec21@ecall.co.jp

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