COLUMN
<第19号>

退職金制度・企業年金(適格退職年金)の見直しについて

 企業を取り巻く企業年金制度が新しい時代を迎え、平成13年確定拠出企業年金法(401K)・平成14年確定給付企業年金法がスタート、同年、退職給与引当金制度(損金算入)が廃止、また、多くの中小企業が導入している税制適格退職  年金は、平成24年3月までに廃止または移行することになりました。
 新法の施行によるスムーズな新企業年金制度への移行、他の制度への移行にあたっての退職金規程の変更や積立金不足の解決、2007年からの団塊世代の大量退職等 企業経営にとって退職金制度の見直しが緊急の課題となっています。
 しかし、大企業に比べ正確な情報が伝わっていない多くの中小企業さんではその重要な問題に気づいていないか、先送りしているのが現状です。今回はこの問題の本質はどこにあり、中小企業の経営者さんがどんな誤解をしているのか、解決の為にまず何をすべきかということを述べさせていただきます。

1.適格退職年金問題の本質
世間では「適格退職年金が廃止になりますが、お宅はどうするんですか?」「401Kか中退共に移行しますか」といったアナウンスばかりが流れています。どの制度に移行するかは確かに重要な選択ですが、問題の本質は別なところにあります。それは、現状に合わない退職金規程をどうするか、積立不足をどう解消するかということです。

◎.退職金規程としての問題
多くの企業の退職金算定方式は基本給連動型(基本給×勤続支給係数)と呼ばれる方法を採用しており、ここに大きな問題点が2つあります。

  1. 毎年のベースアップがそのまま退職金にも連動されていき、企業の要支給退職金額が2次曲線的に増加します。その結果多額の支払い準備が必要となる一方、その準備額は予想しづらいものになっています。
  2. 年功重視型で勤続年数に比例し退職金の額が増える長期勤続者を優遇する制度となっていますが、雇用が流動化し、賃金や賞与に個々の能力や成果、会社への貢献を重視する人事制度を導入しつつある時代に合わなくなってきています。


退職金規程、特に算定方式をどう見直すかが重要です。

◎.積立方法としての問題
 低金利時代の煽りを受け適格退職年金の運用成績が悪化し、退職金の積立を当初の5.5%の利回で設定した多くの会社が大幅な積立不足に陥り、単年度収支さえ赤字になっているケースが散見されます。その結果、従業員に約束した退職金に当てるべく積立が準備できないまま、制度的問題もあり先送り状態になっています。自社の不足額はいくらなのかを認識する必要があります。

2.経営者さんの誤解(退職金規定と不利益変更の誤解)
 経営者さんが陥り易い誤解が2つあります。一つは適格退職年金を解約すれば解決するという誤解、もう一つは従業員さんにとって一方的に不利益になる支給水準引下げが簡単にできるという誤解です。
  1. 適格退職年金は退職金の積立手段に過ぎません。仮に解約して解約返戻金を従業員に前払いの退職金として支払っても、退職金規程で約束している額との差額は支払わなければなりません。退職金規程そのものを見直す必要があります。
  2. 一方的な退職金支給水準引下げは労働条件の不利益変更に当り禁じられています。判例においても圧倒的敗訴です。労使の合意が必要であるばかりでなく、引下げの合理性、経過措置、代替措置、合意に至るプロセスが非常に重要となります。また、水準変更のルールとして、制度変更時点で旧規程に基づいて計算した退職金の額(既得権)を保障しなければなりません。(既得権の保護といいます)
3.現状分析の必要性
自社の退職金制度がまずい状態か否かは、自社の数字でチェックするしかありません。まずは退職金規程と積立金の現状分析が不可欠です。具体的には
  • 現状の退職金の水準とカーブ、他に約束している退職金はないか。
  • 積立不足額や運用パフォーマンスはどのくらいか。
  • 従業員の年齢構成や勤続年数はどうか、特に50代の従業員さんはどうなっているのか。
  • 向こう10年間に必要な退職金額はどのくらいか。
等々

※2007年まであと2年です。早急に自社の退職金制度をチェックされる事をお勧め致します。

専門家プロフィール
本村 正勝

【プロフィール】
退職金・人事コンサルタント・社会保険労務士  
昭和57年南山大学経営学部経営学科を卒業し、株式会社協和銀行(現りそな銀行)入行、家電量販店総務部勤務を経て、開業し現在に至る。

【得意分野】
退職金制度コンサルティング゙、中小企業向け人賃金コンサルティング゙、助成金受給手続き、就業規則等の作成見直し、
労災申請等の諸手続き。


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